一般社団法人 日本原子力学会 Atomic Energy Society of Japan

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リスク情報を活用した原子力施設の安全性の向上について(声明)~日本原子力発電株式会社敦賀発電所2号炉の審査結果に関連して~

                                                    2024年11月20日

                                          一般社団法人 日本原子力学会 理事会

 2024年11月13日の第42回原子力規制委員会において、原子力規制委員会は、日本原子力発電株式会社敦賀発電所2号炉の新規制基準適合性について、敷地内破砕帯の断層としての活動性及び連続性に係るデータに鑑み、設置許可基準規則に適合しているとは認められないとの判断を示しました。

 この判断について、日本原子力学会(以下、「本会」という。)は、耐震重要施設は変位が生じる恐れがない地盤に設けなければならないという現行の基準規則と現在の知見に基づいて原子力規制委員会が判断したものと理解しています。

 本会では、原子力に係る安全性の継続的な向上にはリスク情報の活用が重要であると考えています。今般の審査結果に関連して、原子力発電所の地盤の変位に対する安全性について、リスク情報を活用して議論するためには、例えば推定される変位量に応じた定量的なリスクを評価して事故に至るシナリオを分析し、安全性確保に必要な方策のあり方を議論するなどのプロセスを踏んだ評価手法を確立していくことが今後の基本的な方向性であると考えます。そのためには断層変位に関するデータを幅広く収集し、さらに研究を進めていくことが必要だと考えています。

 本会においては、上記の考えに基づき、国際的な活動状況を参考にしつつ、これまでもリスク情報活用に関する諸規格を検討、制定するとともに、様々な標準・研究報告書を出版してきました。断層変位に関しては、「断層の活動性と工学的なリスク評価」調査専門委員会での検討、断層変位に関する国際シンポジウムの開催、「原子力発電所に対する断層変位を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:2021」の制定などがそれにあたります。

 原子力利用においては、深層防護の考え方を軸とした上で、決定論的評価や工学的判断、さらには確率論的リスク評価も使いながら、不確かさが大きい事象に対しても安全性の確保に努めることが重要です。また、規制基準を含めた安全確保活動全体の合理性、整合性、透明性、説明性を向上させ、もって原子力技術の健全な利用を図ることも重要です。本会は、この考え方を堅持し、さらに改良、発展させていくことで、さらなる安全性の向上に貢献していきたいと考えています。今回の審査結果に鑑み、本会は引き続き次の3点に、より精力的に取り組んでいきたいと考えます。

・科学技術についての最新知見を取得するための研究開発とリスク情報活用の促進に不断の努力を続けていきます。
・その成果を原子力安全のための具体的活動に結び付けるべく、学術界、産業界、政府機関をはじめとする原子力分野に携わる全ての組織に対して働きかけていきます。
・これらの活動・議論の場を透明性をもって提供し続けます。

 本会は、公衆の安全をすべてに優先させて、原子力および放射線の平和利用に関する学術および技術の進歩をはかり、その成果の活用と普及を進め、もって環境の保全と社会の発展に寄与することを目的とし、社会に役立つ原子力技術を追求しています。原子力分野に携わる全ての関係者についても、安全性の確保を旨としつつ、学術、技術の発展とその活用に努めていただくことを要望するものです。

                                                        以上