理事会だより
「2024年秋の大会」開催実施報告
1.実施概要
2024年9月11日から13日まで、東北大学川内北キャンパスにおいて、2024年秋の大会を開催しました。2016年春の年会から実に8年半ぶりに東北・仙台での開催となり、コロナ禍後の対面化された年会・大会の中で最も多い1,443名の参加者を得ました。
今回の大会では、現地委員会が、特別講演として「福島第一原子力発電所の事故対応および廃炉のためのロボット技術・遠隔技術」を企画した他、福島第一原子力発電所廃炉検討委員会、福島特別プロジェクト、社会・環境部会、保健物理・環境科学部会によって、それぞれ福島に関連したセッションが企画され、福島に近い東北の地において最新情報の共有や意見交換が行われました。また、大会終了翌日に、東京電力福島第一原子力発電所および楢葉遠隔技術開発センターの見学会が開催されました。一方、理事会および原子力安全部会が企画したセッションにおいては、2024年1月1日に発生した能登半島地震に関連した原子力発電所の安全性について、理解を深め、その教訓を学ぶ貴重な機会となりました(理事会セッションの内容については、2024年10月10日掲載の理事会だより[執筆担当者:越塚誠一副会長]をご参照ください)。この他にも、部会・連絡会による多数の企画セッションが行われ、このうち学生連絡会とダイバーシティ推進委員会はそれぞれポスターセッションを開催し、会場では対面開催ならではの活発な議論が行われました。また、学生連絡会ポスターセッション会場および大会総合受付と同じ会場には、28の展示ブースが設けられ、多くの参加者に対して出展機関からの情報提供が行われました。さらに、現地委員会のご尽力により、今回の大会では、コロナ禍でしばらく休止していた懇親会が再開しました。懇親会では、学会会場のすぐ隣の東北大学キッチンテラス「Couleur」にて、定員一杯の100名の参加者が集い、東北の美味しい料理と銘酒を楽しみながら、懇親を深めることができました。余興として行われた東北大学応援団の演舞も見事なものでした。
3日間の会期中、気温、湿度ともに高く、残暑厳しい仙台でしたが、それ以上に多くの参加者の原子力に対する思いは熱く、それをお互いに感じ合えた素晴らしい大会になったと思います。成功裡に終えることができましたこと、お世話頂きました現地委員会ならびに関係の皆様、さらにはご参加頂いた皆様に心より感謝申し上げます。
2.秋の大会を終えて(参加者アンケートのご意見)
2024年秋の大会を終え、参加者の皆様にアンケート調査をお願いしたところ、参加者の4分の1を超える384名の方々から、貴重なご意見等を伺うことが出来ました。お忙しい中、ご回答下さいました皆様に心より感謝申し上げます。
今回の大会に対しては、多くの方が、会場への交通アクセスの良さ、発表会場(教室)間移動の容易さを高く評価下さいました。また、多数の発表者および参加者を得たことによって、充実した発表ならびに質疑応答がなされたとの感想を頂きました。一方、Wi-Fi接続、PC等の充電場所の拡充、談話スペースの確保等の要望も寄せられました。さらにプログラム編成に対して、ほぼ同じ分野の発表の時間帯が重複していること、18時を過ぎた遅い時間帯のため参加者が極端に少ないセッションが生じていたこと、一部の会場で多数の参加者により立ち見となったこと、休憩時間が短いこと、ほぼ同じ内容の発表が不連続となっていた等のご指摘を頂きました。これらのご指摘・ご要望は、開催場所・会期の制約等で必ずしもすべてに対応できるものではありませんが、部会等運営委員会にて情報共有し、今後の年会・大会運営において、できる限りの改善を図りたいと考えております。
今回のアンケートでは、次回、2025年春の年会が対面ではなく、オンライン開催となることから、開催方法のご希望を伺いました。その結果、「オンライン開催希望」は34名、「対面開催希望」は246名、また、「どちらでも良い」は103名となりました(無回答:1名)。オンライン希望の方々からは、「春の年会開催時期は多忙」、「年度末の出張手続きは面倒」、「旅費負担の軽減が好ましい」、「現地委員の負担低減が望ましい」、「高齢者、出張できない方々への参加機会を拡充できる」などのご意見がありました。一方、対面開催を希望される方々からは、対面ならではの円滑な意見交換・情報交換、発表時間外の情報・意見交換を通じた人脈形成、学生・若手への発表機会の提供(オンラインでは原稿を朗読するだけ)などの利点を重視したご意見を頂きました。また、今後の年会・大会の在り方として、オンラインと対面を併用したハイブリッド開催、企画セッションおよび研究発表の録画動画の後日公開、撮影禁止の緩和、新たな地域(とくに原子力施設立地地域)での開催、発表申込および予稿提出締切の後ろ倒し、国際化(国際セッションの企画等)、外部委託による現地委員の負担減、学生への旅費支援、などのご要望・ご提案等がありました。
紙面の都合、すべてのご意見およびご提案をここでご紹介することはできませんが、すべてのご回答を拝読した結果、参加者皆様の年会・大会へのご期待の大きさを再認識するとともに、部会等運営委員会の責任をあらためて痛感しました。
3.今後の年会・大会の在り方について
理事会では、「春の年会はオンライン、秋の大会は対面」との方針を決め(2023年6月)、秋の大会は、2025年は北九州国際会議場、2026年は愛媛大学で、それぞれ対面での開催が確定しています。また、上述の通り、次回の2025年春の年会はオンライン開催となっています。しかし、コロナ感染症の位置付けが5類に移行したことから、多くの学会がオンラインから対面に回帰して大会等を開催するようになりました。それと同時に、当会においても多くの会員や出展機関から、他の学会と同様に春の年会の対面での開催を望む強い声が事務局や理事会に寄せられるようになりました。このため、部会等運営委員会および理事会において再度検討し、理事会にて「2025年春の年会はオンライン開催、それ以降の開催については、開催循環の再検討を含めて、部会等運営委員会、支部協議委員会と継続して議論する」(2024年5月)との決定がなされていました。
上述のアンケート結果からも伺えますが、オンライン開催および対面開催にはそれぞれ長短所があり、どちらか一方に決定することは容易ではありません。ハイブリッド開催とのご提案もありましたが、現状では技術的かつ財政的な課題を解決する必要があると認識しています。従って、当面は、対面化した際に懸念される大きな課題である「現地委員会への負担」を軽減した上で、対面開催を行うと同時に、ハイブリッド開催等の可能性を探るのが、現実的なアプローチと思われます。
その後、学会事務局が年会・大会の運営業務内容を整理し、また国内の各自治体コンベンション施設の活用可能性を調査・検討したところ、幾つかの施設においては、会場費支出が増えるものの、現地委員会への負担を大幅に軽減した上で、事務局が主体となった年会開催が可能との見通しを得ました。そこで、2026年春の年会において、それを試行することの可否を支部協議委員会にご相談するとともに、部会等運営委員会(2024年10月21日開催)ならびに理事会(2024年10月30日開催)にお諮りし、それぞれ了承を得るに至りました。すなわち、2026年春の年会は、地方のコンベンションセンターを会場として、事務局主体の運営の下で、対面での開催を試行することとなりました。今後は、会場選定、年会開催に向けた具体的な準備、会場費増に見合う参加料の設定、などを進める予定です。一方、2027年春の年会以降については、開催方法および開催循環(開催地域のローテーション)等の基本的考え方から再検討しなくてはならないと考えています。その際、オンライン開催となる2025年春の年会に参加された方々を対象としたアンケート調査をはじめ、会員の皆様からお寄せいただくご意見を踏まえることはもちろん、対面開催では参加しにくい、育児中あるいはご高齢の方々への配慮も忘れずに見直しを行いたいと思います。会員の皆様におかれましては、これまでの経緯・背景ならびに今後の年会・大会の実施予定についてご理解下さいますとともに、引き続きご意見・ご助力を賜りますよう、お願い申し上げます。
小崎完(副会長、部会等運営委員会委員長、北海道大学)