一般社団法人 日本原子力学会 Atomic Energy Society of Japan

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理事会だより

理事活動の1年を振り返って

 会員の皆さんは、ご自身が所属する日本原子力学会(本会)の部会、支部の活動について良くご存知でしょうか? 一方、理事会では何を議論しているか、あまりご存じない方も多いのではないかと思います。 私は、2023年6月に理事に就任して以降、理事会、常置委員会、小委員会に参加し、本会の経営、各種活動に関する貴重な経験を得る事が出来ました。理事会における私の担務は、本会への入退会者の承認、常置委員会等の組織運営、学会賞受賞者の決定、規程/規約等の諸規則の改定等に関する案件です。参加した委員会は、総務財務委員会、広報情報委員会、国際活動委員会、フェロー企画運営小委員会、経営改善特別小委員会、情報発信特別小委員会です。
 本稿では、これら委員会での活動として、原子力分野の発展に多大な貢献をされて来たフェロー各位の活動、及び学生の皆さんを対象とする渡航費の支援、研究発表や学業において優秀な学生を表彰する制度について紹介します。
 まず本会におけるフェロー制度について紹介します。本会で認定されているフェロー数は300名程度で、本会の発展に顕著な貢献をした会員に授与される称号であり、指導的な会員として、様々な活動に参画し、本会の発展に尽力されている方です。フェローの皆さんが参加し、その時々のトピックスについて意見を交わすサロン・ド・フェローは隔月で開催されています。原子力だけでなく、社会全般にわたり幅広い知識と経験を備え、鋭い洞察力を有するベテランの皆さんが多面的な議論を戦わせるのは大変勉強になります。また、フェローの活動を取り纏めているのがフェロー企画運営小委員会であり、海外発表の参加費/旅費支援、優秀な学生の表彰を行っています。
 フェローによる学生支援の活動を少し詳しく説明します。
■参加費/旅費支援制度
 本会が設立した日本原子力学会フェロー基金を用いて、海外渡航が必要な学生の活動を支援しています。フェロー基金は、フェローの皆さんからの寄付によって運営されています。今年度も多くのフェローから寄付を頂き、学生の支援に活用しています。国際会議発表の支援は5万円/人、10人/年程度です。国際会議での発表は、研究成果を世界に発信できる事に価値があるだけでなく、海外の技術者と議論を戦わせる場を経験できることから、ご自身の研究発表について、度胸(自信)を付けられることはもちろん、更なる研究発展の下地(基礎)を構築することができます。また、異国の文化に触れることも貴重な経験です。
■日本原子力学会フェロー賞
 「原子力教員協議会」へ参加している大学・大学院の所属長(学部長,専攻長等),国立高等専門学校機構に属する高等専門学校機構長の方々に、原子力・放射線分野を学び修めた学業優秀な学生を推薦していただき、フェロー基金を用いて「日本原子力学会フェロー賞」を授与し顕彰しています。
 また、フェローによる支援以外にも本会は学生に対する手厚い支援を提供しています。
■海外留学のための渡航費支援
 原子力学生国際交流事業では、1979年から支援をはじめ、これまで120名あまりの学生が欧米の様々な大学、研究所へ短期留学した実績があります。コロナ禍が収まったため、募集を再開します。電気事業連合会と日本電機工業会からの支援、及び、国際協力基金により、国際活動委員会では、2人/年の海外留学に30万円程度/人を支援しています。海外の大学で、先生方に指導を受け、様々な国から集まる学生達と協力して研究を推進できる事、また、海外で暮らす事は大変ですが、苦労を上回る喜びや新鮮な気付きを体感でき、人生の糧になる事と思います。この支援制度を活用し、海外の人材、技術に触れる機会を得た人は、大学教員、研究者、国内外の企業のリーダー等、日本の原子力界の中心として活躍なさっている方が大勢おられ、留学経験がご自身のキャリア形成に大きく影響を受けたというご意見を頂いています。
■部会、支部研究発表会の優秀賞/奨励賞 
 各部会では、担当する分野において学術又は技術上の業績、年会大会などの行事での発表を評価し、優れた成果を収めたグループ、又は個人に部会賞を贈呈しています。また各支部では、研究発表会における学生による日々研究の積み重ねの成果の発表について、大学/研究機関/企業機関の審査委員が厳正に審査を行い、優れた発表を行った学生に優秀賞、奨励賞を授与しています。一部の支部では、本会の年会大会に参加するための旅費を支援しており、支部の研究発表会で発表した研究を深め、充実させた成果を全国レベルの年会大会で発表してもらう事を願っています。
 私は企業に所属しており、学生の皆さんと直接お話しする機会は多くなかったのですが、面接等の場で本会の支援を受けた海外での活動、受賞の実績をお話ししてくださる方とお会いしたところ、強い印象を受けた覚えがあります。自らの力を試し、そして高める機会として、支援制度、表彰制度を活用してもらえばと思います。

(注)支援額は2024年3月時点の値であり変更される可能性があります。

河合勝則(総務・国際担当理事、MHI NSエンジニアリング(株))