理事会だより
「支部活動のコロナ禍後の対応と今日的意義の実現」
政府は新型コロナウイルスを発生より3年余り経た2023年5月から感染法上の分類を季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げました。その後、長く制限された行事などがコロナ禍前の形態で開催されることも増えました。形を変えたものや失ったものが多かったが、新たな形に生まれ変わり成功したものも多かったようです。形を変えずに残したいもの、時代に合わせて変化していかなければならないものを見直すきっかけになりました。本会支部活動も同様です。本稿では支部活動のコロナ禍後の対応と今日的意義の実現に関して以下にご紹介します。なお、これまでに支部活動のコロナ禍中とその後の在り方に関して検討する機会がありました。その結果はコロナ禍中に関しては本学会誌(ATOMOΣ)の2022年・2023年4月号の理事会だよりに2回報告していますので、ご覧ください。
■支部活動のコロナ禍後の対応
1) 創意工夫による支部活動の機能強化
①コロナ禍後の環境下になった今年度、各支部は創意工夫して講演会・研究技術発表会・オープンスクール(OS)・見学会などを開催した結果、情報共有・意見交換を通じて学会員のレベルアップなどに改善傾向が見られました。創意工夫の良好事例には、講演会などを会員以外に開放したり、地元教育委員会との連携や大学祭・青少年のための科学の祭典を利用してのOS開催などが挙げられます。 ②活動形態も、例えばオンライン開催には対面での直接的な触れ合いが難しい反面、関係する自治体・住民などの支部を超えての参加者の数や層の増加、移動負担や支出の軽減などに繋がるメリットもあります。このため、支部の事情に応じたオンライン・対面・ハイブリッド型の各メリット・デメリットを比較検討しながら効果的に開催しています。なお、支部活動に関してはAESJ ニュースや各支部のホームページなどでも適時報告や案内がなされていますので、ご覧・ご活用下さい。
2) 予算の有効活用による支部活動の活性化
①支部の財務状況はコロナ禍の影響で支出は減っていますが、コロナ禍後の今年度も厳しい状況になっています。理事会では支部活動が委縮することなく活性化するように予算の合理化を進めており、各支部の活動においても収支改善のために、オンライン会議などの利用による旅費の削減、OS活動の共催などによる活動費用の獲得、予算見積と実際の執行額の差の縮小などに努めて戴くようお願いをしているところです。このように、予算削減が見込まれる中での支部活動の更なる活性化に向けて創意工夫や有効性の検討が引き続き必要です。 ②本会の方針として外部資金の出資元・用途を明示し透明性を確保する必要性があるため、OSを実施する学校などに外部資金により開催する旨の了承を求めたところ、利益相反の観点から中立性が確保できないなどの理由で拒否された事例がありました。これについては、引き続き了承をお願いすることにしています。その具体的な説明の方法や明示の仕方については、支部協議委員会とOS小委員会を通じて各支部の経験を共有しつつ各地域の状況に応じて対応しているところです。また、了承されない場合は、外部団体との共催や支部独自の予算での対応も検討して戴くことになっています。
3) 年会・大会の今後と本部・支部の連携強化
①2025年以降は、春の年会をオンラインに固定し、秋の大会は現地とする開催形態に改正されました。但し、状況に応じて再検討することになっています。 ②年会・大会を活用した本部・支部の連携強化の一環として、部会等運営委員会他との開催負担の一層の低減に向け、実施体制・現地サポートの検討やノウハウの共有などが更に促進されつつあります。例えば、現地サポートとして、懸念されています学生アルバイトの確保について、バイト生の職務合理化による人数削減や処遇改善が検討されています。
4) 支部でのジェンダー・バランス改善の推進
①ダイバーシティ&インクルージョンの推進のため、支部協議委員会においても皆無に近い支部役員の女性比率を高めるジェンダー・バランスなどの改善について昨年度検討しました。その結果、今年度から支部協議委員会では支部選出の委員2名と理事である特別委員1名の計3名の女性枠ポスト(女性会員比率が本会(支部も同)の6.5%に対し20%に)を新設し、これを検証しつつ定着させていくことになりました。また、各支部幹事会においても、女性枠ポスト増員に向けた具体的な検討・実践をお願いしているところです。 ②支部におけるジェンダー・バランスなどの改善の主な必要性や意義として、OS小委員会が支部協議委員会の下部組織に移行したこと(下記ご参照)に伴い、リケジョ(理系女子の略)の発掘や育成に関して女性委員よりアドバイスして戴くことがより効果的になると考えています。
■支部活動の今日的意義とその実現に向けて
1) 支部活動の今日的意義
①原子力回帰が注目され発電所の再稼働や新設が議論される昨今、原子力に対する安全・安心には地域社会からの信頼が基本にあります。この信頼を醸成するためには、本会として原子力に係る事業や研究・教育などを真摯に推進するという社会が期待する組織文化などの在るべき姿を追求し実現することが重要です。また、主役は立地地域の住民や自治体ですので、寄り添い理解し合える行動も必要です。 ②この意味において研究・教育支援の最前線であり、理解に資する情報発信源の一つでもある支部活動の存在や責務は大きいと考えます。このためには、各支部は部会・各関連組織とともに他の支部などとの連携を図りつつ積極的な活動を通じ、英知の結集と創造性の発揮により科学的かつ公正に安全・安心を再構築・具現化して、地方からも原子力を復興させる努力の継続が肝要です。支部活動は、標語である「世界規模で考え、地域から行動しよう」の姿勢で臨みたいものです。
2) 人材育成・理解増進や会員増加の活動強化
①本活動は支部において次世代の研究者・技術者を育成・支援し技術の継承や学び直しを図るとともに、新規会員獲得のためにも重要です。このため、効果的な出前授業や支部間の連携・合同開催などを検討しています。また、新しい活動形態として体験型のWeb 利用などの試みもされています。 ②支部では特に将来の担い手になる若手の会員に重点をおいた発表会を開催しており、原子力の魅力や未来像を語る機会にもなればと期待しているところです。また、昨年より毎年1月から12月に各支部で受賞した支部賞の一覧が部会賞と同様にその翌年の本学会誌4月号に掲載されており、若手にとって研究・技術発表の励みにもなっています。
3) 新たな実施体制によるOS活動の効率・促進化
①OS活動は地域の状況に応じてきめ細かく対応する必要があり、全体の企画調整や予算管理を担うOS小委員会と支部協議委員会との連携をより強化することが緊要でした。この観点で今年度、OS運営の課題と支援が一つの常置委員会で一元的に議論され理事会からも把握し易くするため、支部協議委員会の下にOS小委員会は一元化され、これを定着していくことになりました。 ②OS活動は広報・企画(人材確保の視点)・教育・ダイバーシティの活動と連携することにより、一層その効果を高める可能性があります。現在、これら関係委員会からのOS小委員会への参加の具体的方法について検討しているところです。
4) 支部活動発展のための会員からの提案のお願い
会員の皆さんにおかれましては、支部活動をより有効活用・活性化するためのご意見・ご提案などありましたら支部幹事会幹事に是非ご連絡下さい。内容に応じて支部幹事会を通じ支部協議委員会で検討され、重要事項については理事会においても審議され、承認された改善策などは実施されることになっています。改めて、支部協議委員会は各支部の情報共有・原子力理解増進活動などの更なる強化を図ることを目的として支部長などで構成された委員会であり、支部会員の意見集約・発信の場でもあります。
終わりに、会員の皆さんは本会全8支部のいずれかに全員所属されています。本会・支部の今後の一層の発展のために、引き続きご理解とご協力を宜しくお願い致します。
山岡聖典(支部協議委員長、岡山大学)