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- ISBN : 978-4-89047-440-0
- 担当部会 : システム安全専門部会
- 版型頁数 : A4/272
- 発行年 : 2022/3/30
- ISBN : 978-4-89047-440-0
- 担当部会 : システム安全専門部会
- 版型頁数 : A4/272
- 発行年 : 2022/3/30
内容紹介
<まえがきより>
この報告書は,日本原子力学会が,標準委員会システム安全専門部会の下に設けられた炉心燃料分科会
において検討し,同委員会及び同専門部会での審議を経て作成したものです。この報告書は2015 年に初版
として発行され,その後の状況変化や知見の拡充を取り込んだ改定を行い,今回第2 版として発行される
ものです。
この報告書は,発電用軽水型原子炉における“止める,冷やす,閉じ込める”といった基本的な安全機
能に対して炉心及び燃料が担っている役割を明確にし,安全機能を確実にするための設計及び評価の方法
を示すこと,また,それを通して炉心及び燃料の安全設計に係る実施基準を策定する際の基礎資料となる
ことを目的としています。
燃料及び炉心の技術者集団である炉心燃料分科会に課せられた使命は,原子力の安全性を一層高めてい
くことにあります。そのためには“炉心及び燃料が安全に設計されている”ことの意味を十分な科学的根
拠に基づいて説明する必要があります。技術基準が妥当であることを判断するには“炉心及び燃料が安全
であること”の科学的な定義が必要であり,その全てを現行の規制基準,設計指針類から導出することに
は限界があるとの共通認識に至りました。一方,2011 年3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震に起
因した福島第一原子力発電所の1 号機から3 号機の重大事故は,原子燃料の持つ公衆及び環境に対する潜
在的な脅威が現実となり,原子燃料の安全とは何たるかを専門家集団が改めて確認すべしとの認識をもた
らしました。
炉心燃料分科会では,原子炉の安全確保の全体像を改めて整理し,炉心及び燃料が果たすべき安全上の
役割について確認し,既存の規制や設計の枠組みや考え方に囚われることなく炉心及び燃料の安全設計の
考え方を整理して2015 年に技術レポート初版としてまとめました。その後の原子力技術分野の進捗を概観
すると,原子炉物理学や伝熱工学,機械工学等の基礎学理に根差した設計技術には大きな変化はなかった
一方で,安全思想の分野には目覚ましい発展がありました。以前より提唱されていた深層防護思想が広く
根付き,通常・異常・事故時の安全の考え方とこれに基づいた設計,事故対応設備の充実化,公衆安全の
考え方等が整備されています。さらに,我が国の「設置許可基準規則」が2017 年9 月に改正され,地震時
の燃料被覆材の放射性物質の閉込め機能が新たに要求されました。
炉心燃料分科会では,上記の原子力技術分野の事故後の進化を鑑み,初版発刊後に蓄積された科学技術
知見,海外基準,国際動向等を積極的に反映することとしました。炉心及び燃料の安全設計(第1 分冊)
については新知見を遍く収集し,地震時に要求される安全機能への追加等を報告書に反映すると同時に,
漏えい燃料が存在する炉心における安全評価等,新しい考え方についても付録に追加しました。前述のよ
うに,核設計(第2 分冊)及び熱水力設計(第3 分冊)については新知見に基づく技術的な更新は小さく,
報告書の改定は必要ないと判断しました。
報告書は初版の区分を踏襲し3 分冊で構成される報告書として取りまとめました。
・第1 分冊:炉心及び燃料の安全設計
・第2 分冊:核設計
・第3 分冊:熱水力設計
この報告書では燃料棒及び燃料集合体に関する安全設計を“燃料の安全設計”,これに核設計及び熱水力
設計をあわせて炉心全域を対象とした安全設計を“炉心の安全設計”と呼びます。第1 分冊は炉心及び燃
料の安全設計全体の枠組みを示し,主に熱機械設計の観点から損傷モードを抽出し,安全機能維持のため
の要求に展開し,さらに評価対象とすべき事象を選定しました。初版以降の技術的進展が顕著に反映され
た分冊です。第2 分冊では,第1 分冊で整理された損傷モード及び評価すべき事象から出発し,これらの
評価を実施するために必要となる核設計パラメータ及びそれらへの要求事項を整理しました。制御棒駆動
系設計については,設計の対象範囲である機能及び性能,構造設計及び材料設計のうち,燃料に直接関連
する機能及び性能を第2 分冊に含めました。第3 分冊では,核設計の結果を入力として実施される熱水力
設計について,バウンダリの健全性(すなわち,閉込め機能)を確保するために“冷やす”との観点から
要求事項を整理しました。そして炉心及び燃料の安全設計(第1 分冊),核設計(第2 分冊)及び熱水力設
計(第3 分冊)は,それぞれの結果(出力)が他の入力となり,これらの分野が相まって炉心及び燃料の
安全が達成されています。これらの3 分冊では,炉心及び燃料が安全に設計されていることの意味,並び
にそれを達成するための方法と判断の基準が示されています。
この報告書第2 版は,原子力規制委員会及び日本原子力学会標準委員会における最新の活動に対し有用
な情報を与えるものと期待します。また,電力会社やメーカの技術者にとって,燃料設計を進める上での
拠り所となる体系となっています。さらに,大学などの機関の研究者,大学院生などにとっては,体系的
かつ詳細に燃料安全が記述された教科書として機能すると期待されます。昨今技術発展の著しい事故耐性
燃料の開発研究分野においても,燃料安全を考える上での強固な拠り所としての機能も期待されます。こ
の報告書が我が国の原子力安全へ大きく貢献することを切に願います。加えて,炉心及び燃料の安全設計
の考え方を広く普及させ,多くの方々の理解を助けるものとなれば幸いです。