一般社団法人 日本原子力学会 Atomic Energy Society of Japan

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原子力発電所の安全性向上のための定期的な評価に関する実施基準:2023(AESJ-SC-S006:2023)

2403

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17,050円
注文番号 2403-1

登録情報
  • ISBN : 978-4-89047-465-3
  • 担当部会 : システム安全専門部会
  • 版型頁数 : A4/159
  • 発行年 : 2024/6/7
13,750円
注文番号 2403-2

登録情報
  • ISBN : 978-4-89047-465-3
  • 担当部会 : システム安全専門部会
  • 版型頁数 : A4/159
  • 発行年 : 2024/6/7
17,050円
注文番号 2403-3

登録情報
  • ISBN : 978-4-89047-465-3
  • 担当部会 : システム安全専門部会
  • 版型頁数 : A4/159
  • 発行年 : 2024/6/7
13,750円
注文番号 2403-4

登録情報
  • ISBN : 978-4-89047-465-3
  • 担当部会 : システム安全専門部会
  • 版型頁数 : A4/159
  • 発行年 : 2024/6/7
内容紹介

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<まえがきより>

我が国では,既設の原子力発電所の安全性向上を目的とした約10 年ごとの中長期的かつ定期的な
レビューが,1994 年以降,規制制度上の位置づけを変えながら,実施されてきました。現行の規制
基準下で稼働しているプラントにおいて,この定期的なレビューは,安全性向上評価届出制度の一
部である中長期的な評価に位置付けられています。また,高経年化技術評価,及び運転期間の延長
とも密接な関係にあります。定期的なレビューは,長期停止中のプラント及び廃止措置段階のプラ
ントにおいても重要であり,一部は規制要件化されています。
約30 年間にわたる定期的なレビューのプラクティスの中で,“大きな労力をかけて評価を行って
いるにも関わらず,実質的に安全性を向上させる対策が抽出されていない”という問題が繰り返し
指摘されてきました。特に,東京電力福島第一原子力発電所事故の調査は,津波対策が定期安全レ
ビューの機会に適切に改善されていなかったことを,厳しく指摘しています。とはいえ,評価の当
事者にとって,プラントの安全性を証明したいという心理を完全に消し去ることは難しいことです。
従って,継続的な安全性向上のためには,規制制度を踏まえて定期的に安全性を評価するだけでな
く,総合的な評価を踏まえて安全性向上策を提案する方法を丁寧に規定し,それを実行することが
重要であると考えられました。
そこで,日本原子力学会標準委員会は,事故前の規制制度を踏まえた“原子力発電所の定期安全
レビュー実施基準:2009”に代わる標準として,2015 年に“原子力発電所の安全性向上のための定
期的な評価に関する指針:2015”(以下,“PSR+指針”という。)”を発行しました。この標準は,国
際原子力機関が2013 年に発刊したSSG-25(IAEA Safety Standards Periodic Safety Review for Nuclear
Power Plants)を土台として,国内外の良好事例及び慣習を踏まえて議論を重ねた成果です。また,
2020 年には関連する技術レポートとして“原子力発電所の安全性向上のための定期的な評価に関す
る指針:2015”のより良い理解のために”も発刊しました。これらの図書では,“実施できたことを
レビューするのではなく,必要な対策を指摘する”という姿勢を定着させることを念頭に,原子力
発電所におけるPSR+の実施に関する基本的考え方並びに評価の視点及び実施方法を規定し,さらに
多くの推奨事項を記載しています。
今回の標準改定は,2015 年発行のPSR+指針の定期改定に当たるものですが,この検討過程にお
いて,主に次の事項に対応しました。
現行規制制度の下で稼働しているプラントにおける中長期的な評価の経験に基づいて,PSR+指針
の規定事項と推奨事項を見直しました。実態にそぐわないものは見出されなかったものの,要求,
推奨,例示等の位置づけが分かりにくい記載があり,項目を再整理して,何を,どのように実施す
るかを明確にしました。
また,一つの発電所に複数の号機をもつ場合の要求事項と推奨事項を明確化しました。安全性向
上評価届出制度はPSR+指針の重要な活用先となり得る制度ですが,そこでは多大な労力を掛けてプ
ラント毎かつ運転サイクル毎の評価が実施されています。その経験を踏まえ,号機毎に評価するこ
とが適切な安全因子と,発電所単位で評価する方が適切な安全因子とを整理し,基本となる要求事
項を規定しました。
規制制度の変更の見通し及び海外の動向も念頭におきました。
原子力規制委員会は2023 年2 月に“高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要”を決定
し,2023 年8 月に“実用発電用原子炉の長期施設管理計画の記載要領”を制定しました。並行して,
原子炉安全専門審査会及び核燃料安全専門審査会に対しても,安全性向上評価の制度のあり方及び
運用の見直しについて助言を依頼しています。既設炉を安全に長期間利用するために,特にオブソ
レッセンスに備えるうえで,PSR+は有効なものとなります。規制制度の変化は標準の使用者にも大
きな影響を与えますが,今後の制度の詳細には不確定な要素がありますから,中長期的な評価と安
全性向上策の抽出に必要な標準的プロセスを明確にすると共に,特定の制度にだけ当てはまるよう
な要求事項がないことを確認しました。
海外には,定期安全レビューの仕組みを使って安全性を高めながら,既設炉を有効に活用してい
る国が多くあります。スイスでは,定期安全レビューを経て,初期のプラントに対する安全系統の
追設を含む,大規模な改造に踏み切りました。フランスは,標準的なレビュー方法と安全対策を丁
寧に議論した上で,2019 年以降,32 基の900MWe 級加圧水型軽水炉の長期運転を進めています。
カナダでも,定期安全レビューを基盤の一つに据えて,カナダ型重水炉の大規模改造工事を順に進
めていく計画です。これらのプラクティスの内容を確認したうえで,この標準がそのようなプラク
ティスにも対応し得るものであることを確認しました。
“原子力発電所の安全性向上のための定期的な評価に関する実施基準:2023”は,一般社団法人
日本原子力学会が標準委員会システム安全専門部会の下に統合的安全性向上分科会を設けて検討し,
システム安全専門部会及び標準委員会での審議を経て,PSR+指針に代わる新しい標準として,策
定・発行したものです。この改定標準においても,Proactive Safety Review(PSR+)で表す“事前に
率先して安全性向上措置を抽出する”というPSR+指針の理念を踏襲したうえで,前述のプラクティ
スを織り込んで,実施基準化を行いました。
この標準を適用することにより,中長期な視点で,予見性をもって,かつ合理的に安全性向上の
ための措置を考え出すことができ,プラントの継続的な安全性向上を図ることが可能になります。
プラントのライフサイクルに応じて適切な規制制度に当てはめ,積極的に活用されることを期待し
ています。
最後に,この標準が規定する活動が定着し,過去の経緯及び規制制度との関係を説明する長い“ま
えがき”を記載する必要がなくなることを切に願っています。