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- ISBN : 978-4-89047-458-5
- 担当部会 : システム安全専門部会
- 版型頁数 : A4/36
- 発行年 : 2023/12/26
- ISBN : 978-4-89047-458-5
- 担当部会 : システム安全専門部会
- 版型頁数 : A4/36
- 発行年 : 2023/12/26
- ISBN : 978-4-89047-458-5
- 担当部会 : システム安全専門部会
- 版型頁数 : A4/36
- 発行年 : 2023/12/26
- ISBN : 978-4-89047-458-5
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- 発行年 : 2023/12/26
内容紹介
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<まえがきより>
“加圧水型原子炉一次冷却材の化学分析方法-ほう素同位体比:2023”は,一般社団法人日本原子
力学会が,標準委員会システム安全専門部会水化学管理分科会PWR 水化学管理指針作業会,同分科
会,同専門部会及び同委員会での審議を経て制定し発行したものです。この標準では,プラントシス
テム全体の信頼性の維持,向上の観点から, 通常運転時, 停止時及び起動時のほう素同位体比を精度
良く検知することを目的として,原子炉一次冷却材のほう素同位体(10B)比を化学分析するための具
体的方法を規定しています。
加圧水型原子炉(PWR : Pressurized Water Reactor)の一次系では,高温高圧環境下で一次系構成材料
及び燃料被覆管が冷却材及び減速材としての水と接触しており,水質によっては,腐食反応によって
一次系構成材料及び燃料被覆管の健全性に影響を及ぼす可能性があります。また,一次系構成材料の
腐食によって発生する腐食生成物が水中に溶け出し炉心で放射化され一次系構成材料の表面に移行し
て蓄積すると,これが線源となって作業従事者の被ばく線量の上昇の原因となります。このため,水
化学管理を適切に行うための指針の制定が必要とされてきました。
このような状況のもと,2011 年に発生した福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ,軽水炉の自
主的安全性向上の取組みのもとに“加圧水型原子炉一次系の水化学管理指針:2019”が策定されまし
た。水化学管理の目的として,一次系構成材料及び燃料被覆管の健全性維持並びに作業従事者の被ば
く線量低減の3 項目がありますが,原子力安全の基本原則のうち,一次系構成材料及び燃料被覆管の
健全性維持は,“放射線リスク源を閉じ込めること”に繋がり,被ばく線量低減は,“人と環境を護
ること”に繋がります。“加圧水型原子炉一次系の水化学管理指針:2019”は,これらの概念を体系化
し,原子力安全の達成,維持,向上に資することを目指して制定されています。
“加圧水型原子炉一次系の水化学管理指針:2019”では,一次系構成材料及び燃料被覆管の健全性
維持並びに被ばく線量低減の観点から,通常運転時の原子炉一次冷却材の水化学管理項目,制御項目,
診断項目,制御値,推奨値,アクションレベル,アクションレベル逸脱時の対応及び分析頻度並びに
停止時及び起動時の原子炉一次冷却材の制御値,推奨値及び分析頻度を規定しています。また,品質
管理の箇条で規定されている化学分析は,加圧水型原子炉一次系における水化学管理の品質を担保す
るものであり,原子力安全の基本原則のうち“異常・故障の発生防止”並びに“異常・故障の検知及
び拡大防止”に該当します。加圧水型原子炉一次系システム全体の安全性確保に係る分析項目につい
て適切に運用管理するためには,精度の高い信頼性に優れた化学分析を行う必要があり,“加圧水型
原子炉一次系の水化学管理指針:2019”を下支えするための化学分析方法の整備が求められていまし
た。
この標準では,これらの項目のうちJIS などで標準化されていない原子炉一次冷却材のほう素同位
体比の化学分析方法を日本原子力学会標準として規定しました。ほう素は,“加圧水型原子炉一次系
の水化学管理指針:2019”において,通常運転時の原子炉一次冷却材において分析頻度並びに停止時
及び起動時にはほう素濃度の制御値及び分析頻度が規定されています。ほう素は通常運転中の炉心反
応度制御の観点から冷却材に添加されており,ほう素濃度の変化を確認しています。また,未臨界維
持機能をもつ機器として,施設の安全性を確保するための安全機能が要求されているほう酸タンク及
び燃料取替用水タンクでは,停止時の未臨界担保の観点から必要な濃度以上であることを確認してい
ます。
ここで,ほう素を構成する10B の同位体比は,通常運転中に中性子吸収によって減損するものの,
通常運転中の10B の同位体比の変動を適切に考慮したほう素濃度の管理が行われています。また,減
損した10B の同位体比は,停止時の未臨界担保のためのほう酸補給によって天然の同位体比に近づき,
10B 減損の程度は安全設計及び安全評価における余裕に吸収される程度に収まるように管理されるこ
ととなります[1]。
従来,10B 減損による10B の同位体比の変動を把握することの重要性は認識されていたため,2008 年
には発電事業者によって予測と実測の比較確認が実施されており,これまでと同様の運用によるほう
酸補給を継続することによって,10B 減損による炉心の安全性への影響が生じるものではないことを
確認しています[1] 。
上記のように10B 減損による安全性への影響が小さいことは確認されているものの,通常運転時の
炉心反応度制御並びに停止時及び起動時の臨界管理における安全評価の前提の確認に位置づけられる
ことの重要性に照らして,安全性への確認は定期的に実施していくことが望ましいものです。具体的
には,今後も継続して所定の設備に対して10B 同位体比を測定することで10B 減損に関わるデータを
蓄積し,これらのデータを用いて安全余裕を明確化することで,安全性確認の信頼性を向上していく
取り組みが重要です。
また,炉心管理においても,10B 減損を踏まえて,停止時の最小ほう素濃度及び臨界ほう素濃度の評
価を行っているため,10B 同位体比を継続して測定することは,炉心管理の信頼性の向上にも貢献す
ることができます。
10B 同位体比は,質量分析計を用いて計測されますが,信頼性の高い定量分析ではほう素同位体比
が既知の標準物質を使用し,試料を繰返し測定することが重要です。この標準では,10B 同位体比の化
学分析の具体的な方法に関する一般事項,サンプリング,器具及び装置並びに化学分析操作を規定し
ています。
この標準を策定した後も,安全性向上に関わる国内外の新知見を発電所の運用管理に適切に反映す
るため,プラントの運転経験及び新知見に基づく適用事例を解析しフィードバックを図ることによっ
て,最新の化学分析技術を取り入れ,標準の改定を適宜行っていきます。このような活動を通じて,
原子力発電所の継続的な安全性向上に寄与できるものと期待されます。