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- ISBN : 978-4-89047-441-7
- 担当部会 : システム安全専門部会
- 版型頁数 : A4/300
- 発行年 : 2022/4/21
- ISBN : 978-4-89047-441-7
- 担当部会 : システム安全専門部会
- 版型頁数 : A4/300
- 発行年 : 2022/4/21
内容紹介
只今、2023年10月13日講習会受付中!!<まえがきより>
近年の計算機能力・解析手法の発達によって,詳細な核熱水力計算モデルを用いる最適評
価コードの開発が進められてきました。これらの最適評価コードによって,高い信頼性をも
って,妥当性確認のための試験結果を原子炉施設の条件へ外挿することができ,設計条件の
変化に対する原子炉施設の挙動変化の感度を把握することができるようになりました。さ
らに,スケーリング手法に基づく計算モデル及び実験データに内在する不確かさの影響を
定量的に把握するための手法が発達し,包絡的に設定された事象について,最適評価コード
と不確かさの影響を考慮する新たな安全評価手法の開発が進んでいます。
この手法を用いて,安全余裕を適正化しようとする研究が欧米を中心に進んでおり,その
具体的なガイドラインとしてCSAU 手法 (Code Scaling, Applicability and Uncertainty
Evaluation Methodology) が米国NRC から発行 (NUREG/CR-5249 Quantifying Reactor Safety
Margins など) されています。CSAU 手法はLOCA の安全研究を背景としながらも,最適評
価コードの使用と不確かさ評価の実施によって,運転時の異常な過渡変化解析を含めた広
い分野に適用できる手法として発展しています。さらに,米国NRC から,運転時の異常な
過渡変化及び設計基準事故の解析手法としての計算モデルの開発と評価 (EMDAP;
Evaluation Model Development and Assessment Process, RG-1.203 Transient and Accident Analysis
Methods) が発行され,評価に適用する最適評価コードが備えるべき要件も明確になってい
ます。
米国などにおいては,原子炉施設の安全設計の基本方針の妥当性を評価するために用い
られる信頼性の高い方法としてCSAU手法及びこれと同等な手法が既に適用されています。
日本国内でも,これら新しい安全評価手法に対する関心が日本原子力学会を中心に高まり,
CSAU 手法を主体とした国内原子炉施設への適用性研究も進展しています。この標準で規定
するCSAU 手法及びEMDAP を拠り所とした手法は,より広範な安全評価への適用を念頭
において作成されたもので,これを“統計的安全評価手法”と呼ぶこととします。
このような背景に基づいて,この標準において取り扱う統計的安全評価では,まず不確か
さの定量化を実施し,その結果に基づき最適評価コードによる解析と統計的な処理を組み
合わせることによって,確率の情報を含むより現実的な評価結果を得ることができます。こ
れが安全上の判断基準を満足することを示すことによって,運転時の異常な過渡変化及び
設計基準事故が生じるとしたときの安全余裕を定量的に把握することが可能となります。
本手法を取り入れることによって説明性の高い原子炉施設の安全評価が実現されるものと
期待されます。また,本手法を適用することによって原子炉施設の安全性の確認に最新知見
を反映できることが期待されます。さらに,安全評価に対する影響度の大きい解析条件及び
最適評価コード又は計算モデルなどに関する個別の不確かさを適切に定量化できることか
ら,今後の効率的な安全研究及び合理的な原子炉施設の設計を実施していくための議論に
資することも期待されます。
統計的安全評価の実施基準:2008(以下,“前標準”という。)は,(社)日本原子力学会
が標準委員会発電炉専門部会における統計的安全評価手法標準分科会,同専門部会,同委員
会での審議を経て制定したもので,2008 年頃までに得られた知見に基づき,原子炉を設計
するに当たって実施される安全評価解析において,統計的安全評価を実施する手順を規定
したものでした。
前標準の発行後,2011 年3 月11 日に東京電力株式会社福島第一原子力発電所で,東北地
方太平洋沖地震を引き金とするレベル7 のシビアアクシデントが発生し,原子力の安全性
への社会の信頼は大きくゆらぐ事態となりました。この事故の原因を解明し,その反省及び
教訓を踏まえて原子炉の安全性を一層向上させることは,原子力における喫緊の課題であ
り,社会の信頼を取り戻すために必要な取り組みの一つとなっています。
2008 年に制定された前標準で採用された統計的安全評価手法は,2021 年の現在でも,最
も実績があり,また,最も信頼性が高い方法であるとの評価は変わっていません。しかし,
制定から10 年を経過した現在,この事故の教訓に基づき,最新知見に照らして内容を継続
的に改善し,安全評価の信頼性及び説明性を着実に向上させる必要がありました。
このような状況を受けて,システム安全専門部会では2017 年3 月に,改定の必要性を認
めて統計的安全評価標準分科会を再開することにしました。この再開によって,原子力安全
に関わる産官学の幅広い技術者,研究者,規制機関の関係者などが参集し,標準の改定を進
めました。同分科会では,新しい評価技術及び最新知見に関する広範な調査を実施して,得
失を分析した上で,この標準ヘの導入のために慎重に審議し,学術的に公平かつ公正な審議
を通じて標準の改定作業を行うことで,前標準と比較して,最新知見を踏まえた科学的によ
り信頼性があり,説明性の高い安全評価手法ヘと改定しました。
前標準からの主な変更点としては,基本的な統計的安全評価の方法は変更しないことと
し,評価の各手順において用いる様々な方法に関して,最近の進展を踏まえて,より進んだ
実績のある新しい方法を導入し標準の高度化を図りました。また,それに合わせて適用例の
更新を行いました。さらに,この標準と関連性の高い“シミュレーションの信頼性に関する
ガイドライン:2015”における記載との一貫性の向上を図りました。また,図による説明,
個々の方法の実施に当たっての留意点などを追加し,前標準に比べ分かりやすい記述・表現
となるように努めました。
統計的安全評価の実施基準:2021 は,(一社)日本原子力学会がシステム安全専門部会の
下に統計的安全評価手法標準分科会を設けて検討し,システム安全専門部会,標準委員会で
の審議を経て策定・発行したものです。この標準は,発電用軽水型原子炉施設の安全評価に
おいて,高い確信度で判断基準ヘの適合性を評価するための標準的な統計的手法を実施基
準として規定したものです。
AESJ-SC-S001:2021 には,次に示す附属書があります。ただし,附属書(参考)は標準
の一部ではありません。
附属書A(規定) 最適評価コードの要件及び管理
附属書B(規定) 重要度ランクテーブル(PIRT)の作成
附属書C(参考) 統計的安全評価の適用例
附属書D(参考) 統計的安全評価の具体的手順の説明
附属書E(参考) 最適評価コードの要件及び管理,並びにスケール則に関する補足
附属書F(参考) 重要度ランクテーブル(PIRT)の作成に関する補足
附属書G(参考) 最適評価コードの適格性評価の考え方
附属書H(参考) 統計的安全評価手法における不確かさの拡大及び保守性について
附属書I(参考) 統計的安全評価に用いる確信度についての考え方
附属書J(参考) 安全評価の実施方針についての考え方