一般社団法人 日本原子力学会 Atomic Energy Society of Japan

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原子力発電所の継続的な安全性向上のためのリスク情報を活用した統合的意思決定に関する実施基準:2019(AESJ-SC-S012:2019)

1728

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20,625円
注文番号 1728-1

登録情報
  • ISBN : 978-4-89047-428-8
  • 担当部会 : 統合的安全性向上分科会、PRA品質確保分科会
  • 版型頁数 : A4/220
  • 発行年 : 2020/6/11
16,500円
注文番号 1728-2

登録情報
  • ISBN : 978-4-89047-428-8
  • 担当部会 : 統合的安全性向上分科会、PRA品質確保分科会
  • 版型頁数 : A4/220
  • 発行年 : 2020/6/11
内容紹介

内容紹介:

<まえがきより>

“原子力発電所の継続的な安全性向上のためのリスク情報を活用した統合的意思決定に関する実施基準:2019”は,一般社団法人日本原子力学会が標準委員会システム安全専門部会の下に統合的安全性向上分科会を設けて検討し,システム安全専門部会及び標準委員会での審議を経て策定・発行したもので,リスク情報を活用した統合的意思決定(Integrated Risk-Informed Decision Making:IRIDM)の標準的なプロセスを実施するための要件を規定したものです。リスク評価にかかる部分についてはリスク専門部会が検討を分担しました。

我が国においてリスク情報は,1990年代初頭のアクシデントマネジメント(AM)策検討に参考にされるなどの活用を経て,2000年以降,旧原子力安全委員会及び旧原子力・安全保安院からリスク情報活用のための課題と方向性にかかる複数の文書が出され,安全目標,性能目標にかかる審議も進められました。原子力学会標準委員会でも,確率論的リスク評価(PRA)手法の標準を策定・発行していました。特に,2009年の技術レポート“リスク情報活用の本格導入に向けた関連規格の体系化に関する今後の課題と提言”は,リスク情報の本格活用の実現に向けて,規制機関,事業者,研究機関,原子力学会が行うべきことを提言し,リスク評価に留まらない“活用の実行”に期待したものでした。同時期に,標準委員会では“原子力発電所の安全確保活動の変更へのリスク情報活用に関する実施基準:2010”(RIDM2010 標準)を制定発行し,オンラインメンテナンス導入などの実現に必要な技術基盤を提供しました。しかし,10年近い年月をかけ文書及びガイドラインまで出したにも関わらず,当時リスク情報活用は根付きませんでした。その原因は,必ずしも2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故(福島第一事故)だけではなく,リスク情報を原子力発電所の様々な意思決定に活用することの重要性,利得の理解の関係組織間の共有が不十分であったこと,客観的な情報による自主的な活動の意義が認識されなかったことも,その一因であると考えられます。

福島第一事故後,リスクマネジメントを導入しPRAなどから得られるリスク情報を活用して安全性を向上することは,事故以前とは違う位置づけでより強く求められています。規制委員会からは,規制基準への適合性審査においてPRAによる代表シナリオの抽出が求められ,事業者から地震PRA及び津波PRAをも含むリスク情報が提示されていることは一つの進歩と言えます。さらに,安全性向上評価の制度は事業者が自ら施設の安全性を評価し安全性向上のために講じた措置を公表する適切な仕組みとして運用されています。さらに検査制度の見直し検討が進んでおり,リスク情報を用いたパフォーマンスベイスドの制度である米国のROP(Reactor Oversight Process)を参照されています。

原子力発電の安全性を維持,向上させていくには,事業者が,自ら考え自ら行動する原子力施設の安全性確保活動は,対策を実施したことだけで維持されるわけではなく,評価と向上策の検討を常に継続していく必要があります。規制においても絶えざる変革が求められます。そのためには,PRAなどから得られるリスク情報に加え,運転経験,実施のリソース(体制,資金,時間など)ほか,多くの要素を収集,評価し,それを基に統合的な意思決定を行い,マネジメントすることが重要である,と考えます。

そこで,2017年12月に発効した技術レポート“継続的な安全性向上対策採用の考え方について”で調査したリスク情報を活用した意思決定にかかる国内外の諸組織におけるプロセスを参考にしながら,わが国でIRIDMプロセスを実施するために必要な実施事項を標準として制定しました。この標準は,数多くあるリスク情報活用の活動に共通して守るべき事項を規定しています。ただし,活用する活動によってはすべての規定事項を適用することは必要ありません。例えばこの標準では複数の“キーエレメント”を用いて分析を行うことを求めていますが,問題の軽重によって調整することも可能としています。すべての活動に対しIRIDMを固定的形式的にしてしまうことがないように,この標準ではいくつかの事例を示しています。まだ数は少ないですが,今後取組み事例が増えていけば増強していく予定です。

我が国の原子力規制は,総合規制評価サービス(IRRS;Integrated Regulatory Review Service)の指摘への対応でリスク情報を活用する検査制度に大きく舵を切っています。我が国の電気事業者11社が2018年(平成30年)2月に“リスク情報活用の実現に向けた戦略プラン及びアクションプラン”を出していますが,その中ではリスク情報活用の取組みを着実に遂行し自律的な安全性向上を目指す,と明記されています。IRIDM標準がぜひ,この活動の下支えになるよう,また規制機関及び事業者の活動事例をこの標準へ反映し,将来のより合理的なリスクマネジメントにつなげていくことを希望します。