原子力研究は、原子核物理、熱工学、アクチノイド科学、材料工学などの多くの分野の知識を組み合わせた総合工学である。その中でアクチノイド科学は、多くの研究者が原子力分野に集中している。そのため、基礎的な理解に基づいた学問分野を原子力研究の中で形成する必要がある。アクチノイド元素およびアクチノイド化合物の基礎的理解によって、物性予測の精度を高めることができるばかりでなく、これまで経験的に進められてきた核燃料、核燃料サイクル関連技術開発をより効率的に進めることが可能となる。アクチノイドの化学的特徴を電子論的に理解するために、本書では第一原理計算の基礎理論を学ぶとともに、大型放射光施設を利用したエックス線吸収微細構造(XAFS: X-ray absorption fine structure)を対象として第一原理計算を用いた解析手法を学ぶ。本書の内容は、文部科学省の原子力人材育成等推進事業費補助金による機関横断的な人材育成事業「日本アクチノイドネットワーク(J-ACTINET)」による原子力人材育成」の一環として平成22年度?24年度に実施したJ-ACTINET計算科学スクールでの講習内容に基づいている。(「まえがき」より抜粋)