理事会だより
「経営改善特別小委員会の今年度の取り組み状況」
はじめに
本会では、2012年1月の理事会により「経営改善特別小委員会」を設置し、事務局職員の給与体系の見直し、事務業務の合理化、学会誌編集の経費削減、組織のガバナンス強化、会員数増加や収入増加、標準活動運営委員会の設置、新規事業の開拓を進めてまいりました。 過去10年の活動により、本会の経営状況の悪化はある程度食い止められ、小康状態に移りつつあるところですが、いまだに状況が好転したとは言えず、厳しい状況にあることに変わりはありません。このような状況のもと、経営改善特別小委では、さらなる経営改善のための検討を継続し、具体的方策に取り組んでいます。今回は、昨年度の経営改善小委委員会の取り組み内容と、今年度の状況を紹介します。
昨年度の活動成果
近年の会員数減少に伴う会費収入の減少が進む中、増収策として賛助会員特典の見直しを検討しました。現在の会費収入は年間約1.1億円ですが、そのうち賛助会員の割合は約4割です。個人会員については今まで様々な方策を講じてきましたが、賛助会員については3年前を最後に積極的な対応を実施してこなかったことから、改めて対策を検討しました。 検討の結果、賛助会員の特典を追加するとともに、それを賛助会員に周知することにしました。これにより新たな賛助会員を勧誘するとともに、現状の賛助会員の継続と口数の増加につなげていこうと考えました。具体的な賛助会員特典の見直し内容は、先般、ホームページに掲載したことはもとより、AESJニュース、会友向けニュースでもお知らせしました。また、賛助会員の皆様に会費納入のご案内と合わせてダイレクトメールも発送しました。具体的内容はホームページの以下のリンク先でご確認下さい。
賛助会員の皆さまへ | 日本原子力学会 (aesj.net)
今年度の活動計画と実施状況
今年度は年度事業計画を踏まえ、改めて新規入会者の獲得を中心に収支改善の方策を検討することにしました。その上で、新規入会者獲得以外の収入増加方策も合わせて検討するとともに支出削減についても検討することで収支改善の両輪を作ることを目指すことにしました。また、直接、収支改善に寄与するものではありませんが、経営改善特別小委の本来のミッションの一つである学会会務の合理化・効率化も検討することにしました。 今年度の取り組み内容を決めるため、第1回の経営改善特別小委でブレーンストーミングでフリーディスカッションを行い、実現が困難なものから、比較的道筋の見えるもの、過去、検討したが成果を回収することなくそのままであったものなど、様々な観点から課題案を抽出し、個別に議論しました。また、他の委員会、部会と相互に連携することで改善が図れるものも議論しました。とりわけ総務財務委員会で過去2年間、当初予算の赤字計上額を極力少なくする努力を重ねていた中で、部会から有益なアドバイスをいただいたことも参考にし、今回の活動に取り込みました。 これらの議論を通じ、下記の課題メニューと取り組みの方向性を決め、現在、実現に向けて取り組んでいます。
1.収支改善
(1)賛助会員の獲得
a.2022年度に検討した賛助会員特典見直しの周知と効果の確認
b.賛助会員の新規入会勧誘、口数減少企業・団体への依頼
(具体的内容) 2011年以降、口数を減らした賛助会員や脱退された賛助会員について、各者の現状を分析の上、口数の増加や再入会をお願いしたいと考えています。特に今年度は国会で原子力基本法が改正されるとともに、GX関連法案が成立したことを踏まえ、原子力に関わる企業、諸団体の中には、改めて原子力に前向きに取り組んでいこうとお考えの方々もおられるのに違いなく、それらの方々にしっかり働きかけていこうと考えています。
(2) 新規会員の獲得
a. 会友への新規入会勧誘方策の検討
b. メーカー、研究機関、官公庁所属の方々への新規入会方策の検討
c. 学生会員増加方策の検討
d. 情報発信の更なる強化による原子力関係組織所属の未入会者への興味喚起
(具体的内容) 会友については昨年、会員サービス委員会がアンケートを実施し、入会に興味を持ったというご回答もありました。しかし、会友の方々にとって、やはり入会のハードルは相当に高いと思われます。このため、一度限りの年会・大会への無料招待や3ヶ月間限定会員など、新規の方が試しに当会に関わってみる機会を提供することを検討しています。当会の魅力、面白さを肌で感じてもらえる機会を創出し、新規入会に繋げられないかを検討しています。
(3) 支部・部会等の稼ぐ力の強化
a. 国際会議で高収益を上げた案件の抽出
b. 高収益案件からの良好事例・教訓の導出(部会等運営委員会、国際活動委員会と協業)
c. 稼ぐ力強化策の策定と学会内共有(部会等運営委員会、国際活動委員会と協業)
(具体的内容) 昨年の予算編成の過程で部会や支部が持っている繰越金の使用については規程に則った厳格な運用をお願いしました。しかし、他方で予算が厳しい中では、繰越金を柔軟に使うことで、より効率的かつ実効的な学会活動ができるのではないかというご提案をいただきました。総務財務委員会で検討した結果、国際会議等での収益を複数年度にわたって上手に使うことで、よりよい活動に繋げられると結論しました。このため、2024年度から繰越金を柔軟に使用できるよう規程を見直すことにいたしました。 この検討において、主に収益を上げている事業が国際会議であることが明らかになりましたが、部会単位では、国際会議は毎年開催するものではなく、数年おきに開催するため、知識、経験を伝承することがやや困難な面もあり、ましてや効率的に高収益を上げることは容易ではありません。このため、国際会議を中心に各部会での良好事例を抽出し、広く本会全体で共有し、稼ぐ力の強化を検討することにしました。この活動は当初、部会等運営委員会で全体的な良好事例・教訓の抽出・共有として提案され、そこに収益についての観点も加えていただくよう経営改善特別小委からお願いしたものです。国際活動委員会とも協業してまいります。
(4) 支出削減
a. 黒字予算編成の目標を達成するため、不要・不急の支出を減らす方策を検討する。合わせて、各組織が不要・不急の支出を減らす動機を創出する。(総務財務委員会と協業)
b. 学会誌電子化(PDF化)の再検討
(具体的内容) 支出削減については昨年と今年の総務財務委員会での実施事項と検討を継続してまいります。本格的にコロナ禍も明け、本格的に対面活動が再始動してきましたので、やはり支出は増加方向に動きます。生き生きとした活動ができるよう、上手に予算を使っていきたいと考えています。 学会誌の電子化については他学会での前例も多数あり、3年前から検討を進めてきました。電子化により会員サービスを低下させないよう努めますが、環境への配慮という観点もありますので、これまでの検討をさらに深く掘り下げ、しっかりと電子化を進めていきます。
2. 学会会務の合理化・効率化
(具体的内容) 収入増加、支出削減に直接現れるものではありませんが、時代の変化に合わせて事務局組織の経営効率化を進めていくことは、常に必要なことです。今回は、理事、委員、本部要員の会務、業務の無駄の見直しを図り、本部ならびに事務局が本来的、創造的業務に注力できる環境を作ることを目指します。まずは、常置委員会等の準備、進行の無駄を把握し、合理化案の検討を俎上に乗せていきます。このための具体的課題と方策を抽出するため事務局、委員会、部会へのアンケート、インタビュー等を計画しています。
佐藤 拓(副会長、原子力エネルギー協議会)