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- ISBN : 978-4-89047-416-5
- 担当部会 : 水化学管理分科会
- 版型頁数 : A4/166
- 発行年 : 2019/10/25
- ISBN : 978-4-89047-416-5
- 担当部会 : 水化学管理分科会
- 版型頁数 : A4/166
- 発行年 : 2019/10/25
内容紹介
<まえがきより>
この指針は,(一社)日本原子力学会が,標準委員会 システム安全専門部会 水化学管理分科会 BWR水化学管理指針作業会,同分科会,同専門部会及び同委員会での審議を経て制定したものです。この指針では,発電用軽水型原子炉の安全性確保に係る冷却水などの水質管理(以下,“水化学管理”という。)が担っている役割を達成すべく管理方法を規定しています。その実践を通じ,プラントシステム全体の信頼性の維持,向上,及び被ばく低減による作業従事者の安全確保が期待されます。
発電用沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)では,高温高圧環境下で構造材料及び燃料被覆管が冷却材及び減速材としての水と接触しています。一般に,金属材料と水の界面では腐食反応が起こりますが,とりわけBWRのような高温高圧環境下では,水質悪化に伴い構造材料及び燃料被覆管の健全性に影響を及ぼすことが懸念されます。特に水質悪化が長期間に亘ると,原子炉冷却材圧力バウンダリからの冷却材漏えいや燃料破損が生じることで,環境への放射性物質の放出に繋がる可能性があります。また,構造材料の腐食によって発生する腐食生成物が水を介して炉心で放射化され材料の表面に移行蓄積しますと,これが線源となって作業従事者の被ばく線量の上昇の原因となります。
したがって,原子力安全の確保と共に作業者安全の確保のためには,水化学管理の側面からは,
- 腐食損傷の抑制による構造材料・燃料被覆管の健全性維持
- 線源強度低減による作業従事者の被ばく低減
の継続的な達成が求められます。
しかし,腐食損傷の抑制及び被ばく線量低減は,複雑に絡み合っているため,水化学管理による運用変更は,一方へはメリットになるが,他方へはデメリットとなる側面も有していることから,電気事業者(以下,“事業者”という。)は,プラントシステムを包括的に捉え,多様な課題に対して,調和的に解決する必要があります。
このような状況の下,国内原子力発電所では,事業者が腐食や線源強度上昇に係る種々の試験結果や40年超に亘る運転経験から水化学管理に係る運用(管理項目,基準値,管理頻度,逸脱時の措置 等)を定めると共に,国内外の知見及び最新技術を適宜取込むことによって,水化学管理を実施してきました。しかし,2011年に発生した福島第一原子力発電所事故の教訓から,事業者間に限らず,その枠を超えて異なる分野の専門家と利害関係を超えた公開の場で水化学管理のあり方を議論することが社会的に要求されております。このため,公平,公正,公開の原則に基づく日本原子力学会標準として水化学管理指針を策定することによって,福島第一原子力発電所事故後の安全性向上に係る取組みを示すことが期待されます。
この指針は,事業者やメーカの技術者にとって,より良い水化学管理を実践していく上で拠り所となるもので,解説に記載された管理値等の設定に係る技術根拠は,若手技術者への技術伝承のみならず,大学などの機関の研究者にとっても教材として幅広く機能することを期待しています。
指針を策定した後も,安全性向上に係る新知見及び水化学等に係る最新技術を発電所の運用に適切に反映するため,指針を改定していきます。このような活動を通じて,原子力発電所の継続的な安全性向上に寄与できるものと期待されます。