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- ISBN : 978-4-89047-407-3
- 担当部会 : 外的事象PRA分科会、津波PRA作業会
- 版型頁数 : A4/186
- 発行年 : 2019/5/15
- ISBN : 978-4-89047-407-3
- 担当部会 : 外的事象PRA分科会、津波PRA作業会
- 版型頁数 : A4/186
- 発行年 : 2019/5/15
内容紹介
<まえがきより>
原子力発電所に対する津波を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:2016は,日本原子力学会が標準委員会・リスク専門部会の下に,外的事象PRA分科会,津波PRA分科会を設けて検討し,リスク専門部会,標準委員会での審議を経て策定・発行したものです。原子力発電所の出力運転状態における津波を起因として発生する事故に関する確率論的リスク評価(津波PRA)の有すべき要件及びそれを満たす具体的方法をPRA実施の手順を踏まえて実施基準として規定したものです。
標準を策定することを使命とする標準委員会,原子力事故に伴うリスク評価の実施基準策定を使命とするリスク専門部会にとって,2011年3月11日は銘記すべき日となりました。同日14時46分に東北地方太平洋沖地震が発生しました。およそ40分後から津波が相次いで来襲し,福島第一原子力発電所では全交流電源喪失と最終ヒートシンクの喪失が発生する事態になりました。その後,交流電源が復旧することなく炉心損傷,燃料溶融,放射性物質の放出に至りました。さらに,この事故の対処に大きな影響を及ぼしたのは,原子炉建屋の水素爆発でした。原子炉のみではなく,原子炉建屋内の燃料プールも冷却が十分にできない事態に陥りました。
このような深刻な事故を踏まえ,日本原子力学会標準委員会ならびにリスク専門部会は,津波PRA分科会を設置して津波PRA実施基準を作成するとの声明を発表しました。標準委員会ならびにリスク専門部会の,津波リスクを評価することが喫緊の課題であるとの判断を示すものです。日本の原子力施設では外的事象,特に地震とそれに随伴する事象のリスクが支配的であること,それに起因する包括的なリスク評価を求めるべきであることを改めて認識するところです。
これらの議論を受けて,日本原子力学会では,津波単独の影響に対応するリスク評価実施基準として“AESJ-SC-RK004:2011 原子力発電所に対する津波を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:2011”を策定しました。また,標準発行後の最新の研究知見の集約として“AESJ- SC-TR006:2012 原子力発電所に対する津波を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準の評価適用事例集:2012”を発行しました。
原子力発電所のPRAは,確率論を用いて原子力発電所のリスクを総合的かつ定量的に評価する手法で,事故の発端となる事象の特性に応じて,発電所の内部で起きる機器故障及び人的過誤など内的事象に起因するPRAと,地震又は火災などの外的事象に起因するPRAに大別されます。炉心又は燃料が損傷に至る事象に着目して,事故シナリオ及び損傷後の事象進展を同定し,その発生頻度及び影響を分析することによって,安全設計・運転管理・安全規制などの広い分野における意思決定プロセスを支援する効果的な手段と認識されています。
我が国は世界でも有数の地震国であることから,地震に関する研究が早期から精力的に行われてきました。関連して,津波の発生及び被害に関しても研究成果が積み重ねられてきました。原子力発電所の地震PRAにおいては,地震に関する研究成果及び耐震技術開発の実態を踏まえて,研究機関及び産業界において評価手法の整備検討が進められ,日本原子力学会では,地震重畳を対象としたリスク評価手法に拡張すべく段階的に検討を進めてきており,地震PRA標準につき,他の外部事象との重畳を考慮した“AESJ-SC-P006:2015 原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:2015”として改定を行いました。津波PRA標準については,地震PRA標準の改定内容と整合性を取るとともに,地震と津波の重畳に加え他の要因によって発生する津波に対応する標準としました。
ここに述べた状況を踏まえ,津波PRAを実施する場合の考え方,満足すべき要件及び具体的な方法について調査検討を行い,関連する分野の専門家の意見を踏まえ,津波PRAの実施基準を規定することにしたものです。